自殺列車
「おい、大丈夫かよ」


心配になり声をかける。


けれど、もちろん両親に俺の声は届かない。


2人の目の下のクマはひどくて、ろくに眠れていないのだと言う事もうかがえた。


母親は化粧もしておらず、いつも綺麗だったあの姿はどこにもない。


その原因は言われなくてもわかっていた。


俺のせいだ。


俺が、死んだから……。


親友だけでなく、両親の生活も一変してしまっている。


時間が経てば心の傷は癒えていくかもしれないけれど、それって一体いつだ?


いつまで、安田や両親はこのままなんだ?


こんな状態の両親を見て平気でいられるはずがなかった。


俺は父親の肩に手を伸ばしていた。


しかし、その手はすり抜ける。


「なぁ親父、そんなつらそうな顔すんなよ」


震える声でそう言う。


「母さんも、ちゃんと化粧をすればすっげぇ美人なんだからさ」


それでも、2人は俺の写真に視線を落したまま動かない。
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