自殺列車
テレビの音だけがやけに賑やかに響いている。


その時だった。


母親が突然泣き始めたのだ。


それは小さな子が癇癪を起こすのと似ていて、大きな声を上げている。


父親はそんな母親を抱きしめ、背中をさすった。


なんだよ……。


なんだよ、これ!!


俺は自然とその場から後ずさりをしていた。


俺が1人いなくなっただけで、こんなにも変わってしまうなんて急に恐ろしくなった。


人間1人の命って、そんなに重たいのか?


何人もの人間の生活を狂わせるくらい、重大なことなのか?


「旺太! 旺太!!」


母親は泣きじゃくりながら俺の名前を呼ぶ。


俺は咄嗟に母親の手を握りしめていた。


「俺はここにいる! ここにいるから!!」


懸命に声をかけるが、母親には通じない。


涙はとめどなく流れ、声がかれるほどに俺の名前を呼ぶ。
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