自殺列車
☆☆☆

リビングを出た後も母親の鳴き声はずっと響いていた。


それを振り払うように、俺は和室へと足を進めた。


一階の一番奥の部屋は和室になっていて、そこにはばあゃんがいる。


ばあゃんもあんな風になっているかもしれないと思うと足は重かったけれど、その顔をもう1度見ておきたかった。


俺は一番奥の茶色のドアをスッとすり抜けて入って行った。


和室の真ん中にチョコンと座っている小さな背中。


俺はその背中を見た瞬間、ホッとしていた。


いつもと変わらないばあちゃんの香りもする。


「ばあちゃん……」


そう呟き、前へと回る。


するとばあちゃんは居眠りをしていた。


その様子にクスッと笑う。


ちゃんとベッドで寝ないと風邪をひくかもしれないと思いながらも、俺はその寝顔を見ているしかできなかった。


部屋の隅に置かれている仏壇に目をやると、そこには俺の写真が飾られていた。
死ぬ、少し前に撮った写真だ。
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