自殺列車
☆☆☆

景色が変わってゆくのを感じた後目を開けると、そこは見知らぬ部屋の中だった。


出窓にたくさんのぬいぐるみが置かれていて、外国製のカラフルな家具が置かれている部屋をグルリと見回す。


窓際に置かれているベッドの中に、彼女はいた。


名前も知らない盲目の彼女。


俺は彼女の寝顔に自然と笑顔になっていた。


長いマツゲが小刻みに震えて、今にも目を開けそうだ。


俺ベッドの隣にしゃがみ込み、その頬に触れた。


もちろん、手は彼女の頬を通り抜けてしまう。


「君が生きていて本当によかった」


そう呟くと、彼女が寝返りを打った。


背中を向けむにゃむにゃと何かを呟く。


「なに?」


そう聞き返すと「あたしのせいで……ごめんなさい」という言葉が聞こえて来た。


ハッとして目を見開く。


まさか、俺の声が聞こえているのか?


「君の名前は?」


そう聞くが、しばらく待っても返事はなかった。


やっぱり聞こえるわけがないか。


ただの寝言だったみたいだ。


そう思い肩を落として立ち上がる。
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