自殺列車
「だって、夢の中では一番会いたい人に会えるんだもん」


そう言い、マリは上半身を起こした。


「そう、なんだ……」


一番会いたい人。


という言葉にドキッとしてしまう。


「ずっとあなたにお礼が言いたかった。夢の中でもいいから会わせてくださいって、何度も神様にお願いしたのよ」


そう言い、マリが手を差し伸べてくる。


咄嗟に俺はマリへと手を伸ばしていた。


触れ合う事のない手と手。


しかし、近づいた瞬間マリのぬくもりを感じていた。


「とても暖かな手をしているね」


そう言うと、マリは少し首を傾げた。


「あなたもよ?」


「俺も?」


「うん」


頷くマリの頬に、一筋の涙が流れた。


その涙に困惑していると、マリがそっと俺に近づいた。


距離がグッと近くなる。
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