自殺列車
「……ごめんなさい。あたしのせいで……」


「……大丈夫だよ」


俺は嘘をついた。


本当は全然大丈夫じゃない。


俺の未来はなくなり、そして大切な人たちの未来も大きく変えてしまった。


俺はマリの背中に両手を回した。


そして、強く抱きしめる。


触れていないはずなのに、マリの体は俺に引き寄せられた。


「生きていれば、あたしきっとあなたを好きになってた」


ずっと見ていた。


憧れていた女性からの告白。


死ぬほど嬉しいはずなのに、俺の胸は切なさで張り裂けそうになっていた。


マリにとってこれはただの夢だ。


目が覚めればいつも通りの日常に戻ってしまう。


「俺は、ずっと前から君を見ていた」


もしかしたら、マリの事が好きだったのかもしれない。


でもそれは言わなかった。


親友と家族を見てよくわかった事が1つだけある。


一番大切なのは、日常生活を取り戻すことだ。
< 193 / 222 >

この作品をシェア

pagetop