自殺列車
当たり前の事が当たり前にできる生活。


追いかけていた夢をまた追いかけられるようになること。


化粧をして出かけること。


仕事を頑張ること。


無理せず、人に頼ること。


それが、一番大切なことだ。


俺はマリ体をそっと引き離した。


「君はきっと大丈夫。俺なんかの為に泣かないで、俺なんかの為に立ち止まらないで」


そう言い、頬に流れる涙を指先で拭った。


「待って。1つだけ聞かせて」


そう言われ、俺はマリを見た。


「あなたはあたしの事が好きだった……?」


マリの言葉に俺は一瞬言葉に詰まった。


好きだと言いたかった。


君と一緒に生きてみたかった。


「……いいや、好きじゃない」


俺の言葉を聞いた瞬間マリの表情が曇った。


「君は綺麗だから、男からきっと誰もが君に振り返るだろうね。だけどそれは好きとは違う」


「……そう……」


沈んだ表情のマリに胸がチクリと痛む。


俺は時計に目を落とした。


時間は残り2時間。
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