自殺列車
女性は買い物袋をキッチンのテーブルに置くと、袋からチョコレートを取りだし澪の仏壇に添えて手を合わせた。


そして忙しそうに料理を始める。


こんな時間から食事か?


時刻は夜の20時だ。


そういえば、こんな時間なのにこの部屋には誰もいない様子だった。


その時玄関が開く音が聞こえて来て2人分の足音が聞こえて来た。


「ただいま美羽」


「おかえりお母さん、お父さん。ご飯すぐできるから」


「ありがとう。お風呂洗うから」


「うん」


「美羽、仕事の方はどうだ?」


「順調だよ」


「そうか、澪がいなくなって家の仕事も増えたけれど、順調ならそれでいい」


そう言いながら、パソコンを広げて仕事を始める父親。


なんだか見ていてとても忙しそうな家族だ。


自分の時とは違い、みんなそれぞれ日常生活を変わりなく送って行く。


その光景に俺は瞬きを繰り返した。
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