自殺列車
「ちょっと待って?」


澪が何か思いついたような顔で言った。


「どうした? 澪」


「みんな蝶を追いかけてここへ来たって事は、この電車がどこへ向かっているかわからないってことじゃない?」


「あ……そういわれればそうだよね」


あたしは頷く。


「マジかよ。ここにいる全員が電車の行先も知らずに乗ってるのかよ」


朋樹が呆れた顔でそう言った。


「朋樹は、この電車の行先を知っているのか?」


優志が恐る恐るそう声をかける。


「あ? しらねーよ、そんなの」


あ、やっぱり知らないんだ。


呆れた顔をしていたから、朋樹はこの電車の行先を知っているのかと思った。


どちらにしても電車は停まっているみたいだし、いまだ何のアナウンスも聞こえてこない。


あたしたちの状況は何一つ変わってはいなかった。
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