自殺列車
この看板があるから俺はここへ着いたのか?


そう思った次の瞬間、俺は電車内で見た光景を思い出していた。


あれは前の車両に移動した時、朋樹は顔を真っ赤にして苦しんでいた。


それはまるで呼吸を止められたような苦しみ方で……。


俺はそっと池の方へと視線を移した。


まさか……。


まさか、まさか!!


ダッとかけだし、池の中を覗き込む。


しかし池の水は濁っていて中まではほとんど見えない状態だ。


俺は躊躇することなくその池へと飛び込んでいた。


水音は立たず、スッと水をすり抜けるようにして足が池の底に付いた。


池の底の方は更に見通しが悪く、大きな石がゴロゴロと転がって歩きにくい。


朋樹がこのどこかにいるはずだ!


そう思い、見えない視界の中手探りで歩いて行く。


大きな池だが流れはない。


この池の中に沈んでいるのだとしたら、その場からほとんど動いていないだろう。


そしてこの池にはボートは置かれていない。


それから推測して考えると、朋樹の体は池の端を歩いて行けばみつかるはずだった。


俺はジッと前を見据え、朋樹の体を探し始めたのだった。
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