自殺列車
☆☆☆

真っ暗な池の中では時間の経過も感じられず、俺は時々時計を確認した。


あれから30分経過している。


普通に歩く速度で30分経過しているから、池は一週しているはずだった。


けれど、どこにも朋樹の体は見つからない。


もしかして、朋樹はここにはいないのか?


焦りに似た気持ちが歩調を早めた、その時だった。


俺の足に何かが触れてこけそうになった。


立ち止まり足元に目をやる。


しかし、視界が悪く見えなくて俺はその場でしゃがみ込んだ。


その瞬間……目が、合った。


大きく見開かれた目から眼球が転げ落ちそうだ。


ブヨブヨに膨れ上がった顔と体。


魚につつかれところどころ皮膚がえぐれている……そんな、朋樹がいた。


「う……っ」


俺は思わず口を手でふさいだ。


朋樹の体は服が石に引っ掛かり、浮上できないままでいたのだ。
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