自殺列車
その、瞬間。


一瞬目の前の光景が理解できずに思考回路は停止した。


次の部屋は寝室だったらしく、大きなベッドが1つ置かれている。


そしてそのベッドの横にあるカーテンのレールから、女性がぶら下がっていた。


その人は部屋着のような姿で、首にロープを巻きつけもう動いてはいなかった。


「なっ……!」


咄嗟の事で声もでない。


ロープはしっかりとカーテンレールに結び付けられていて、足元には踏み台にした椅子が横倒しに倒れている。


女性の足元には乾ききった糞尿が落ちていて、そこにもウジが湧いている。


見たくなくても、俺の視線はその死体へと注がれていた。


死んでから少し時間が経過しているのか、口から出ている臓器は乾燥していて黒くなっている。


「これが……愛奈の母親……?」


俺はそう呟く。


その顔はあまりにもひどく、愛奈に似ているかどうかもわからない。


そして、ハッとした。


愛奈は一体どこへいるんだろう?
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