自殺列車
ここに来たという事は、家の中にいるはずだ。


でも、リビングにも寝室にも愛奈の仏壇はなかった。


嫌な予感が胸の中で灰色のモヤを作る。


俺は寝室から隣へと続いているドアに目をやった。


この家はそんなに大きな家じゃない。


トイレと風呂場は見ていないけれど、愛奈がいるとすればこの隣の部屋だ。


ドアの前まで来て、朋樹の死に顔を思いだしていた。


まさか、愛奈も同じ様な事になっていないような?


ドクドクと心臓が高鳴る。


見てはいけないものがこの先にある。


そんな気がする。


でも、行かなきゃいけない。


みんながどうなっているのかこの目で確認しておかなきゃ、俺は前へ進む事ができない。


そう自分に言い聞かせ、俺はドアをすり抜けた……。
< 210 / 222 >

この作品をシェア

pagetop