自殺列車
「なんだ……?」


そう呟き、移動する。


血の色が濃い方へと移動するとその冷気は強くなっているようだ。


まさか……。


俺はかがみこみ、壁際の床にそっと手を触れた。


手はスッと床を通り抜け、俺は体ごと床下へと移動していた。


真っ暗でほとんど明かりがない床下に、愛奈はいた。


見開かれた目はジッと部屋の床を睨みつけていて、眉はつり上がっている。


愛奈の手は空中へと延びていて、爪が剥がれて血まみれになっているのがわかった。


嘘だろ……。


俺は愛奈の視線を追って床の板へと視線を移動させた。


するとそこには何度も床をひっかいたような血の後がこびりついていたのだ。


頭部を殴られた愛奈は死んでいなかったんだ!


あれはただ意識を失っている状態だった。


愛奈の体は生きたまま床下に閉じ込められ、出る事もできずに死んで行ったんだ。
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