自殺列車
だけど、その分きっと家族は悲しんだだろう。


俺の両親のように毎日写真を見つめて泣いているかもしれない。


それが、俺と穂香の償いか……。


そう思ったとき、リビングのドアが開き部屋に電気がついた。


足音に気づかなかった俺は驚いて振り返る。


すると、そこには1人の男性が、両手足を固定されガムテープで口を塞がれた女の人を抱えるようにして立っていた。


この人……。


俺は写真に視線を戻す。


何枚かある写真の内、一枚にその人物は写っていた。


穂香の隣で笑っている男性。


きっと、父親だろう。


だけど、その表情は全く違うものだった。


写真の中の優しさなんてかけらもない、まるで鬼のような顔をしている。


父親は女の人とソファに座らせると、その前に立った。


女は明らかにおびえた様子だ。
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