自殺列車
「そうだ。自分たちは覚えていないだろうが、親を残して死んだ人間には2つの道が用意されている。

1つ目は、いつ成仏できるかわからない石積を続けること。2つ目が、49日間だけ苦しみを味わい、成仏すること」


「俺たちは自分でそれを選んだのか?」


そう聞くと、「そうだ」と、車掌は頷いた。


「苦しみを感じても、確実に成仏できる方を選んだんだ」


そうだったのか……。


「俺の記憶はまた消えるのか?」


「消える」


「今、見てきたことも全部……?」


「……そうだ」


そう言われ、俺はその場に膝をついた。


少しでも憶えていることはできないのだろうか。


みんなの顔や名前だけでいい、電車内での恐怖を軽減させる方法はないんだろうか。


「あの……っ!」


「それは無理だ」


言葉を続ける前にそう言われ、俺は目を丸くした。


「え……?」


「お前が『少しでも記憶をとどめておくことはできないのか?』そう聞いてくるのは、10回目だ」

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