自殺列車
そう思い、上着のポケットに手を入れる。


しかし、いつも入れているそこにスマホの感触はなかった。


「あれ? あたし、忘れてきちゃったのかな?」


「俺も、スマホがない」


「ちょっと、冗談でしょう?」


あたしと朋樹の言葉に愛奈が焦りの顔を浮かべる。


「お前のスマホをかせよ」


「あたしは持ってないから」


と、愛奈は左右に首を振る。


「は? いまどきスマホを持ってないとかないだろ」


「持ってないんだから持ってないんだってば!」


愛奈はイライラしたように声を荒げた。


一見派手なのに、友達とのやりとりにスマホを使わないなんて珍しい。


「ねぇ、澪は?」


「さっきから探しているけれど、あたしも忘れてきちゃったみたい」


「ダメだ。俺も持ってない」


と、旺太。


優志も、困った顔のまま左右に首をふった。
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