自殺列車
その意味を理解して、ドキッとするあたし。


異性に抱きしめられた経験なんてないし、どうすればいいのか反応に困ってしまう。


でも……今は少しでも近くで誰かのぬくもりを感じていたい。


そう思い、あたしは思い切って旺太の腕に身を預けた。


男の人の体は想像以上に大きくて、ゴツゴツとしている。


旺太があたしの背中に手を回すと、更にあたしの心音は早くなった。


それでも旺太の胸に顔をうずめると、守られているという安心感から体の震えが徐々に治まって行くのを感じる。


「大丈夫、心配するな」


何の根拠もない旺太の言葉だったけれど、耳元でささやかれると本当に大丈夫な気になって来る。


旺太の大きな手があたしの背中を何度も撫でて、その度にあたしは落ち着いていった。


人前で男の子に抱きしめられるなんてすごく恥ずかしいけれど、気分の悪さも消えて行った。


「もう、大丈夫みたいね」


そう言ったのは愛奈だった。


あたしは旺太から離れ、愛奈を見る。


愛奈は笑顔を向けていた。


「心配かけてごめんね」


「心配なんてしてないわよ。この空間ではみんなの体調が同じになるの、忘れた?」


そう言われてハッとした。


「じゃぁ、みんなも気分が悪かったの?」


「そういう事よ。だけど、1人の気分が良くなればそれが連動されるみたいね」
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