自殺列車
それは1人で知らない世界に閉じ込められてしまったような、すごく不安な気持ちだった。


「旺太、あたしも5日の記憶がない……」


旺太にすがるようにそう言うあたし。


「みんなは?」


旺太が朋樹に聞く。


朋樹も愛奈も、元々日付の感覚が鈍っていたから3月5日と言われてもピンとこないみたいだ。


でも、2人とも季節的にはあたしたちと同じ記憶を持っている。


それなら、無くなった記憶も同じタイミングの可能性は十分にあった。


「3月5日に、一体なにが起きたんだ?」


旺太がそう言うが、どうしてもその日の出来事を思い出す事はできなくて、あたしは首を左右にふったのだった。
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