海色の恋、甘い時間
教室に戻って移動教室の準備をしていると、黄原君がわたしの席の前を通った。

「あ、黄原君」

「え、なに……?」

声をかけると、黄原君に怪訝そうな顔をされた。
朝、突然変なこと聞いたから、もしかして警戒されているのかも知れない。

「今度はビンタして逃げられなくて、良かったね?
大事にしてるんだね」

一安心だよ、と笑うと、黄原君も照れたように笑顔を浮かべた。

「もう傷つけないって、約束したから。
ゆっくり、うみのペースで進むんだ」

「うん、そうだね」

寒くて冷たい冬を乗り越えて、暖かな雪解けの春。
幸せそうな2人を見ていると、わたしは穏やかな気持ちでいっぱいになる。
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