我那覇くんの恋と青春物語~横西めぐみ編~
「おい、あの二人がまた中庭でやっているらしいぞ」


廊下の誰かが発した声が聞こえ、気持ちが少し重くなるのが分かった。

折角の水谷さんとの時間が終わりを告げる、そう思った。


「あっ、一樹。お前の出番だぞ」


うちの教室から親友の石動光太郎が顔を出し、それは現実のものとなった。


「コウ、なんで俺なんだよ」


「いいから、行ってやれよ」


その言葉に大きく溜息をつく。

「ごめん」と水谷さんに言い、窓を開けて隣の教室に入った。


「頑張ってね」


水谷さんのその言葉だけが唯一、中庭に向かう足に力をくれた。



それにしても、卒業式も間近というのに・・・

エアが卒業するのだから仲良くとまではいかなくとも、せめて静かに終わればいいのに。

まあ、犬猿の仲だとそういうわけにもいかないのだろう。
< 12 / 38 >

この作品をシェア

pagetop