我那覇くんの恋と青春物語~横西めぐみ編~
「えっ」


横西さんのその一言は二人だけでなく、周りにいる全ての人を静かにさせた。

そして、二人を掴んでいる横西さんの目は潤んでいて、それが涙ということは誰が見ても明らかだった。


「二人とも、ずるいよ。分かっているんだよ、ボク・・・なんでそんなに二人がいがみ合ってばかりいるか、分かるんだ」


「そ、それは、すずはこいつが大嫌いで・・・」


「だから、分かってるんだってば。それ以外に、もっと大きな理由があるだろ?エアだって、そうだろ?」


「それは・・・」


二人の視線が一瞬だけこちらに向いた気がしたが、すぐ下を向いて黙り込んでしまった。

いつもなら二人が大人しくなって解決・・・なのだが、横西さんの様子がおかしい。

こんなとき何て言葉をかけていいのか、情けないがいくら考えても浮かばなかった。


「そうやっているキミ達が・・・同じ場所に立っているキミ達がボクは羨ましいよ。ボクなんて・・・」


「横西さん」


声をかけようとしたとき、溜まっていた涙がついに溢れ出てきた。

それを見て、伸ばしかけた手を引っ込める。


「キミ達と同じ場所にすら立てない、違う場所にいるボクには何もできないじゃないか!」


二人を突き放し、横西さんは人だかりを抜けて走り去っていく。

追うにしても状況が理解できないことと、二人を残して大丈夫なのかという思いが足を止めているようだ。
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