我那覇くんの恋と青春物語~横西めぐみ編~
彼女が向かった場所には、心当たりがある。



迷わずにその場所へと向かうと、彼女は一人で芝生の上で座っていた。


「見てたのかい」


こちらに気付くと、目の前に流れる川に視線を向けたまま口を開いた。

何も言わずに頷いて彼女の横に座り、すぐ傍にあった小石を川に向かって投げた。


「この場所・・・覚えていてくれたんだね」


落ちた小石で揺れる川面を見つめながら、彼女の視線はそれよりもどこか遠くへと向いている気がする。



ここは彼女にとって秘密の場所だ。



そのことを知ったのは、二年の学園祭の準備のときだ。



彼女はバイトばかりしていることなどもあり、なかなか学校に馴染めずにいた。

準備をしていてもクラスに仲の良い友達はおらず、学校を飛び出したところを追いかけて辿り着いたのがこの場所。

とはいっても、この場所に来たのはそのとき以来二度目だ。


「ボクは・・・いつもキミに助けられてばかりだね」


振り向くと、彼女は笑顔でこちらを見つめている。

その笑顔はどこかいつもと違っていて、けれども、どこが違うのかと聞かれても説明はできない。
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