1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
気づくまで
『はぁ、はぁ…』
あの頃の俺は、自分の中にあふれる狂気のような、得体のしれない感情を吐き出すために手っ取り早かった暴力をあちこちで振舞っていた。
相手なんか、誰でもよかった。
酔っぱらったサラリーマンでも、少し名を馳せるような高校生相手でも。少しでもむかつく奴は殴って、蹴って、暴力を振るってきた。
『ったく、面倒なもん見つけやがって』
3人を一気に相手取って、何とか勝った時だった。
心底うんざりしたような、底なしからのため息のようにこぼれた言葉は、間違いなく自分に向けられていて。顔を上げた先にいたのは、見たこともない男だった。
『あんた、何?』
『はぁ?何上から目線してんだ。ガキが。よもと1コ違いが妥当だろうが』
「よも」と呼んだのがだれなのか、そんなことどうでもよかった。
ただ、目の前にいるこの男は今までの中で1番強い奴だって、本能で分かった。同時に湧き上がってきたのは、恐怖ではなく、好奇心、だった。
『あんた、強いの?』
『…やめとけ。ガキ』
『問答、無用!!』
無謀にも殴りかかりに行った俺は、数秒後、あっさりと地面に倒れる結果となったのは、言うまでもない。
同時に、殴られたショックか、頭をしこたま地面に打ち付けたせいか、俺は意識を失った。