1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

『よも、ババ抜きするぞ~』

 呼ばれると、すぐに飛んで行った蓬は、誰かの膝の上を占領して、ババ抜きに参加する。

 ババが手持ちにあったのか、不機嫌な顔をしているのがおかしかった。

『あいつは、お前を見つけた。お前は、あいつを守らなきゃなんねぇ』

『は!?』

『お前がここにいられるのは、あいつがお前を見つけたからだ。いいな。絶対によもを守れ』

『…そんなこと』

『お前はいつか総長になる。ま、それまでには勝手にそう思ってるだろ』

 総長は少し投げやりにそう言って、どこかへ行ってしまう。

 その時は、意味が分からなかった。いつか自分がここの総長になるといった言葉も、蓬を守らなきゃいけない意味も。

 何もかも、分からなかった。
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