1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 学校に行っても蓬の機嫌のよさは健在で、鼻歌も歌ったまま。

そんな蓬にクラスの数人が珍しく声をかけた。

「蓬ちゃん、おはよう」

「おはようございます」

「機嫌いいね。何かいいことでもあったの?」

「はい!」

 楽しげに話すのも珍しい。って、いつまで機嫌がいいんだか。

「よもちゃん、おはよ」

「あ、雷斗くんおはようございます」

 雷斗も登校してきて、蓬の機嫌のよさに意味が分からないままにハイタッチなんかしてる。

「よもちゃん、なんで機嫌いいの?」

「え?あきくんのお誕生日なので!」

「は?…秋空の?」

 一瞬顔が歪んだのは見ないふりだな。

 雷斗は俺を見て、蓬の手前ケンカは売れないと思ったのか視線をそらす。

「おめでと」

「…おぉ」

 ちょっと意外だな。悪態でも付くかと思ったけど。

視線はすぐにずれて、雷斗の横顔はどこか歪む。あえてそれに触れようなんて思わなかった。
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