1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 バイクを降りて、女の子に視線を合わせるためにしゃがむ。

「お前、家は?どっから来た」

「…」

 何も言わない。それどころか、あっちとかこっちとか指さしもしない。そして、親が探すような声も、しない。

「じゃあ、名前は?」

「よもぎ」

 初めて女の子は口を開いた。鈴が鳴るようなかわいらしい声だった。
 でも、相変わらず不思議そうな顔をしたままだ。

「よもぎ?そっか、蓬って名前か。父ちゃんと母ちゃんは?」

「いないよ」

「え?」

「いないもん…」

 急に女の子の表情がゆがむ。うつむいて、どこか寂しそうな声だった。

 だが、親がいないってどういうことだ。まさか孤児院とかから逃げ出してきたんじゃ…。

 この辺に孤児院は確かに1件心当たりがあるが、そこからここまで結構な距離がある。こんな小さな子どもが歩ける距離ではない。
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