1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「ふぇぇえええん」

「もう!いい加減にしなさい!また叩かれたいの!?」

 不意に耳に飛び込んできたのは子どものつんざくような泣き声と、母親のヒステリックな怒鳴り声。

 思わずぎょっとして視線を向けると、幼い女の子に中年の母親が怒鳴っている場面だった。

 うわぁ、タイミング最悪だな…。

 思わず清牙を見ると、やはりその親子に清牙の視線は釘付けになっていた。

「いやぁぁああああ!!」

「うるさい!黙りなさい!!」

 っあと思った時には、女の子は母親に殴られて地面に倒れてしまった。

 思わずぎょっとしたのは、母親が女の子を叩いた手は、平手ではなく、固く握られた拳だったからだ。

 いくら言うことを聞かないからって、あんな小さな子にグーで殴るってどんな親だよ。

 高校生ながらに母親の行動は異常に見えた。

 殴られた子どもはなぜかピタリと泣き止んで、地面に倒れたまま動かない。

 それを母親が強引に立たせて引きずっていく。
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