1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
なんで。その言葉が1番しっくりきてしまうほど、幸せを願って警察に託した子どもがたった3日でこんなにも傷ついた姿で再会するなんて、思ってもみなかった。
「ちょっと、謝罪もないのか!」
「…あんたは、この子の親か」
「は?」
「いいから答えろ!お前は、この子の母親なのか!」
気を失った蓬を抱きしめ、母親を睨む清牙は完全に怒りに染まっていて、そんな清牙を見た母親は急に勢いを失くしてしまった。
「ち、違うわよ!私は、この子が預けられた施設の職員で…」
「預けられた?」
「そうよ!3日前に警察から身元がわかるまで預かってくれって、連れてこられたのよ!でも、この子全く言うこと聞かないで、あげく施設を抜け出したから…」
清牙の剣幕に押されてこの女性はペラペラと話し始めた。
その間にも清牙が蓬を抱く腕に力がこもった。
「…言うことを聞かないからって殴るのが許されるのか?こんな小さな子に!こんな傷が残るまで、あんたは傷つけたのか!!」
「わ、私だけじゃないわよ!しょうがないじゃない!何人もこの子みたいな問題児が預けられるのよ。私たちだって殴りたくて殴ったわけじゃないわ!」
「言い訳はいらねぇよ。剣人、警察に連絡しろ」
容赦なく警察という言葉を使った清牙に、女性の表情が見る見るうちに真っ青になる。
駆け寄ってきた俊也にコンビニまで走らせて、逃げようとした女性を颯人と2人で行く手を塞いだ。