1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
話し終えるころには、幼い私が見つけた松月の前にいて、人気のない、神聖な空気が漂う場所です。
「蓬にとっては、冒険の終着点だったわけだ」
「まぁ、トラウマになって、しばらくお父さんから離れようとしなくてずっと抱っこしてもらってたみたいなんですが…」
「だろうな。蓬なら、もう無茶しなさそうだ」
あきくんはそういいながら、地面に落ちたばかりの花を拾う。
1輪、花弁が欠けることなく落ちたその花の茎を指で挟んでくるくると回したあきくんは、その花をわたしの耳に引っ掛ける。
「桜の妖精さん?」
「っ…それ、神主さんバカにしてますからね」
「褒め言葉。桜、似合うよ。蓬は」
頬が赤く染まるような感覚。
でも、あきくんの表情は余裕で、それがムカつくのに。どこか暖かくなる。