1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「なんか、食べる雰囲気じゃねぇな」
「坂下りながら食べましょうか」
「それ、花見の意味ないだろ」
「ありますよ。花見は、春の訪れを祝うものなんですから。…あと、新しい仲間と打ち解ける機会。お父さんの受け売りです」
「残念ながら、俺らは親睦を深める機会になりそうだけどな」
「なら、その会に混ぜてもらえますかな?」
「あ、神主さん!」
会話に入ってきたのは、あの時私を助けてくれた神主さんでした。
神主さんはにこにこして、私たちの方へ歩いてきてくれました。
「1年ぶりですねぇ。蓬さん。いや、桜の妖精さんですかな」
「聞いてたんですか…」
「楽しそうな会話が聞こえてきたものでして」
「あ、すみません。なんか…」
「いいえ。蓬さんが、私にとっての桜の妖精さんであることには変わりありませんから」
神主さんは変わらない。
毎年私がお父さんとやってくるのを楽しみにしてくれているようです。