1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 その後、家族総出で誕生日の準備をする。

 とは言っても、ほぼ桃が料理を作るだけで、智希と望亜が一生懸命手紙を書いているくらいだ。

 咲は興味津々なのか智希と望亜の近くに這って行っては、邪魔扱いされて俺の膝に逆戻りを繰り返していた。

「ただいま~」

「あ、ねーね!?」

「ねぇね~!」

 ちょっと想定外の早さで帰ってきたよもにともとみあが慌て始める。
 桃もぎょっとして時計を見上げる。

 16時を少し回ったくらいだ。学校からすぐに帰ってくればこんな時間だろうが…。

 最近は秋空くんとどこかに寄り道やら居残りで17時に帰ってくることが多かったんだが。

「え、清牙、ちょっと連れ出してよ」

「そこまでするのか?」

「パパ!ダメだよ!ねーねにばれちゃう!!」

 桃より智希の方が必死だ。そういえば、智希がよもに手紙を書くなんて初めてで、望亜も初めて絵を送るはず。

 …仕方ないか。

「ねぇねだめ~」

「えぇ、みあちゃんいじわるしないで?」

「め!」

 玄関を既に上がったらしいよもと、望亜の応酬が聞こえてくる。

 咲を抱き上げて立ち上がり、廊下に向かう。
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