1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「あ、お父さん。今日早いね」
「まぁな。秋空くんもよく来た」
「お邪魔します」
案の定望亜に抱き着かれて動けないよもと秋空くんが困った顔をしていた。
「よも、集めてた小説の新作出てたんじゃないか?」
「え?そうでしたっけ?」
「買いに行くぞ」
「えぇ、わざわざいいよ。明日本屋さん覗いてみるから」
「…蓬、俺もちょっと見たいやつあるんだ。連れてってもらおうぜ」
何も言ってないのに秋空くんがはっとして機転を利かせてくれる。流石というべきか?
よもは何か言いかけて口を閉じると不審がりながらも頷いた。
リビングに入る前によもと秋空くん、そしておまけの咲も連れて車に乗り込む。よもに抱っこされた咲はご機嫌になり、たくさんおしゃべりしていた。
時間稼ぎのために少し遠くのショッピングモールまで車を走らせる。
「お父さん、近くの本屋でもあるよ?」
「ん?たまにはいいだろ?」
「…?」
意味が分かってないよもの天然さにこういう時は感謝だ。
秋空くんはそれ以上よもが何かに気づく前に話を逸らす。まるで打ち合わせをした後のような動きだった。