1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「はぁぁあああ!!」

 叫んだ方が、力が出るって聞いたことあるけど、あながち間違ってないと思う。

 突き出した拳は雷斗の頬に容赦なく入る。だけど、同時に腹に鈍い痛みが走る。

 さっきからそんなのの繰り返し。

 いつまで続くかもわからない殴り合い。

 体力なんかとっくに尽きていて、それでもまだ動けるのは、なんでだ…?

 でも、負ける気なんか自分の中に残っていなくて、ただただ相手が倒れるまで拳を振るい続ける。

「っ何やってるんですか!!!」

 不意に耳を貫いた声に我に返る。

 視線だけをそちらに向けると、家に帰したはずの蓬がそこにいて…。

 なんでここにいるんだよ。確かに昇降口まで見送ったはずなのに…!
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