1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
蓬に気を取られて、雷斗を相手にしていることをすっかり忘れていた。
思いっきり足を払われて、背から地面に落ちる。
起き上がる隙を与えずに馬乗りになってきた雷斗は拳を振り上げた。
まっすぐに落ちてきた拳が捉えたのは頬で、口の中が一気に鉄の味に染まる。
「雷斗くんやめて!!」
「ッ!?ッバカ!!」
蓬が雷斗に向かって手を伸ばす。
バカだろ!こんな状態になった雷斗なんかに背後からせまったら…。
雷斗を押しのけようとしても肩を押さえつけられて動けない。
そうこうしている間に蓬が雷斗の肩に触れた。
その瞬間、雷斗の視線は一瞬で蓬を捉えて、蓬が危険を感じた時にはもう遅かった。
「蓬っ!」
雷斗の重心がぶれた瞬間、無理矢理起き上がって蓬に拳を向けた雷斗を押さえつける。
ギリギリのところで蓬には当たらなかったが、2人して地面に転がって、雷斗はやっと我に返ってくれた。