1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「…蓬」

「なんで、こんなケンカするまでやめなかったんですか?」

「…意地だよ」

「でも!…すみません、なんでもないです」

 蓬は顔を逸らした後、まっすぐに俺を見つめてくる。

 ゆっくりと立ち上がって、抱きしめられた。その暖かさに抵抗する気も何も起きなかった。

「もう、こんな怪我しないでください…」

「…分かった。約束する」

 蓬の手を引っ張って、ベッドに一緒に転がる。

 そのまま抱きしめても蓬は何も言わなかった。

 気づいたら眠っていて、目が覚めたときにはなぜか蓬に抱きしめられていて、机の上には土鍋が乗ってた。

 時計を見れば夜中の2時で、蓬を起こさないように起き上がって、土鍋の中身を見れば雑炊が作ってあった。

 近くには『勝手に作ってごめんなさい』と簡単なメモと近くに解熱剤があって、思わず苦笑する。

 そんなこと気にしなくていいのに。

 来た時にはなかったはずの蓬のカバンが俺のカバンの隣にあって、1度帰ってまで面倒見てくれていたことに何とも言えない気持ちになる。
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