1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「蓬が会うことで、パニックを起こすかもしれない。…それでも、会うか?」
「はい。母親にとっては迷惑かもしれませんが、私だって怒りたいことくらいあるんで」
「…その不満は最悪私が聞こう」
「話もまともにできないんですか」
「分からない。としか言えないな。私も何回か訪ねているが、日によって全然違う」
父親は、母親のこと想ってるんだ。
そういえば、すれ違って結局好きなまま別れたんでしたっけ…。
なら、そうなるのもおかしくないのかもしれないですね。
「…雷斗くんのお母さんは…」
「…合意離婚だよ。向こうは、お金さえ渡せばいいとあっさりしていたからね」
「そうですか」
あの事件を通して変わってる人も、変わってない人もいる。
父親は間違いなく前者だ。何だかんだ言いながら、私のことも認めてくれてる。
大宮って名乗らないってはっきり言っても、そうかって寂しそうな顔をしながらも何も言わなかったんですから。
「本人にも確認する。またメールするから、少し時間をくれ」
「分かった。…ありがとう」
「…あぁ」
父親は穏やかに笑って、ワインを煽る。
会うまでは嫌だけど、会ったら何となく大丈夫なんですよね。
ただ、慣れないのはこのナイフとフォークの扱いだけです。
必死に格闘する私を、父親は時々笑っていました。