1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「…私がここに来たのは、あなたと完全に決別するため」

「蓬…あなたは、私の…」

「あなたの子どもじゃない。私はちゃんと両親いるし」

「蓬っ」

「ねぇ、病気だからって容赦しないよ?15年前、あなたは私を捨てたの。たまたま、両親に拾ってもらって、大事に育ててくれたから生きているけど、もし両親に出会えなかったら私死んでたの」

 母親の表情が真っ青になる。でも、それに対して同情なんか一切湧いてこなかった。

 父親も遥人も黙ったまま。あんまりやると遥人が困るよね…。

「…もう過去のことだから、どうでもいいけどさ。…ねぇ、私のこと大事だった?」

「ッ大事に決まってる!!ずっと、ずっとあなたを思ってた。ずっと、傍にいてあげたかった…」

「ならさ、その愛情、遥人にあげて」

「…え?」

「私にはもうあなたは必要ありません。ここにきたのはさよならするためです。…さようなら、もう2度と来ないし、連絡も取らない。再婚するなら、遥人の意見に同意します」

「蓬…」

「…遥人、ごめんね。先に言っちゃって」

「いいよ。俺も言いやすくなったし」

「遥人…?」

 遥人の視線が母親を射抜く。その目はやっぱり凍り付いていた。
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