1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。

 分からない。どうするのが1番なのか。分からない…。

 でも、さっきまであったはずの決心が揺らぐ。

 ここを離れていく覚悟が揺らいでいく。

 お父さんたちと過ごした日々も、嵐鬼のみなさんと遊んだ日のことも、あきくんと当たり前のように約束を交わすことも…。

 もう、できなくなる。ここを離れればもう、それはできなくなってしまうこと。

 当たり前の日々が壊れることが急に恐ろしくなって、お父さんの服を掴んでしまう。

「…離れ…たくない」

「ん?」

「離れたくないッ!ほんとは、ここに…ッずっといたい!」

「うん」

「っう…うわぁぁあああ!」

「それでいい。よく頑張ったな」

 意味が分からなくなって、心の奥に押し込めたものがあふれて止まらなくなる。

 泣きしゃぐって言葉なんか全然出てないのに、お父さんは抱きしめてくれて、余計に歯止めが利かなくなる。

 足元に抱き着いたままの智希も望亜も泣いていて、咲ちゃんまで泣き出して、お母さんが頭を撫でてくれる。

 気が済むまで泣き叫ぶと、ちょっとすっきりしましたが、急に心の中が空っぽになって気持ち悪いです。
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