1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「なんだ?嫉妬か、遥人」
「見苦しいぞ。あれは小さな子だから、演出できるかわいさだ。お前にはもう無理だ」
「む、無理って決めつけないでくださいよ!!」
「いくら弟でも、止めるぞ?」
あれ、いつの間にか遥人が雷斗くんとこうちゃん、あきくんにからかわれて遊ばれています。そちらもいい笑顔です。
その後、アパートから荷物を運び出して、遥人の物はこうちゃん宅へ。
ちなみに徒歩15分の位置にありました。近いです。
そして、母親の遺品や私の荷物は家に持ち帰ることに。
あまり荷物は多くなかったので、部屋のスペースはそう取りそうにないです。
高校に転校の手続きを取り消してもらい、公庄先生にちょっとお叱りを受けてしまいました。
でも、最後にはよかったなって笑ってくれたので、一件落着です。
そうして、後日。先生の意地悪でテストを受けて、正式に登校が認められた3日後。
私の手の中には、いつかの母親からの誕生日プレゼントがありました。
入っていたのは、懐中時計でした。ふたのついているもので、ふたの裏には写真が入っていました。
母親が、赤ちゃんの私を抱いている写真でした。それが唯一の写真だったらしく、母親の遺品のどこを調べても私と母親が一緒に写っている写真は見つかりませんでした。
そして、その懐中時計とともに添えられていた手紙にはただ一言、『愛してる』と書かれていて、笑ってしまいました。
現金なものですね。あれだけ嫌悪していた相手なのに、いなくなるとこんなに空しいなんて。
なんとなく懐中時計を持ち歩いてしまうのもそのせいです。