1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 なんで。そりゃ、ちょっとムカつくし、清牙くんのことが好きな子たちからしてみれば、確かにうっとうしい存在なのかもしれない。

 だけど、だけど…。

 だからって、あんなことしていいわけないじゃん!!!

 上履きのまま外に飛び出す。

 さっき見えたところは多分、こっち!完全に死角となったエリア。

 さっきだって、たまたま桃が抵抗した時にその死角から外れてきたからだ。

 最後の角を曲がったところで、信じられない光景が広がっていた。

 桃を取り囲む何人もの女子。先輩の姿まである。

 桃はボロボロで、制服も乱れてしまっている。それに、周囲に落ちているのは髪の毛。桃の髪の1部に無残に切られた跡がある。

 なんで…。

「これで懲りたでしょ?清牙くんに近づくのやめなさいよ」

「…嫌」

「はぁ!?あんたこの状況分かってんの!?」

「嫌って言ってんでしょ!!あんたらみたいな卑怯な奴らのいいなりになんかならないから!!」

 こんな状況でも、毅然とそこに立つ桃の姿に思わず目を奪われる。

 屈してしまう状況のはずなのに、全然屈しない桃の姿はかっこよくて、同じ女として誇らしげで…。

 今まで何してたんだろ私。こんなにも魅力的な子、なんで最初に声かけなかったんだろ。

 友達になりたい。そう素直に感じた。

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