1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「あんたたち!その女押さえつけて!」
多分、リーダー格の女が叫ぶ。
その声に我に返って、カバンの中から携帯を取り出す。カメラを取る画面に切り替えて、目の前の光景に向かってカメラを向ける。
―ッカシャ
シャッター音が響く。驚いて振り返った女たちに向かって、またもう1枚。
「あんた!何してんのよ!!」
そう叫ぶ女に1枚。桃が抑えられるところをまた1枚。
ハサミを持った女を1枚。こっちに向かってくる女に1枚。1枚、1枚、1枚…。
「やめなさいよ!!」
「やめんのはどっちよ!!この写真!全部先生に突き出してやんだからね!!!」
これでもう、戻れない。
この人たちを全員、敵に回したんだ。だから、戦ってやる。こんな卑怯な奴らの側に回るなら、戦った方がましだ!!
証拠写真を撮り続ける。腕を掴んで来ようとする女を避けて、足を引っ掛ける。
こう見えても合気道やってたんだよね。相手の動きに合わせるのは得意だよ?
その間も写真を撮り続ける。私を捕まえられない女たちが慌て始める。
「っに、逃げるよ!!」
1人の声で、女たちが慌てたように逃げ出していく。
残ったのは私と桃だけ。