1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
その時から、彼女とは一切会わなかった。連絡を取ることもしなかった。
会社を設立して、がむしゃらに仕事をして…。14年経った。今から2年前だ。
会社も軌道に乗って来た時だ。
突然、彼女は俺の前に現れた。
『勝手だって、分かってる。…お願いします!蓬を返して下さい!!』
『…どういうことだ』
『え?』
『…蓬って、子どものことだろう?あなたが、育てていたんじゃないのか』
『え…私…あなたの家に、あの子を…』
そこで、初めて蓬が14年前に俺の家に連れてこられていたことが分かったんだ。
家を探し回ると、下駄箱の下から手紙が出てきた。
蓬を、守って欲しいと。
結婚した相手は酷い暴力を振るい、蓬の命も危なかったらしい。
だから、無理を承知で頼むと。
蓬の生死も分からないまま、14年も経っていたんだ。
今さら警察を頼っても無理なことは分かりきっていた。
だから、手当たり次第に探した。
そして、見つけたんだ。蓬を。