1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「颯人、お前なんでこの高校来たんだ?」
3日ぐらいが経った。
晴野くんは至極真面目にテスト勉強をしに来ていて、雑談もほとんどしない、必要なところだけ聞いてくる。
そんな晴野くんの勉強スタイルにほっとして、他人と話すのがそんなに得意ではない僕も居心地がすっかり良くなっていた。そんなころだった。
晴野くんの不意な質問は、思わず僕の手を止めてしまうもので、握っていたペンを握りしめる。
「…第1。落ちたんだ」
本当は自宅から結構近い県内でも頭のいいところに受験した。
だけど、受験当日、同じ試験室だった人の騒動に巻き込まれて、結果落ちてしまって、定員がまだ空いていた公立の高校に滑り込みで受けたのがこの高校だった。
大学にも行きたかったから、この学校に来たのは結構な致命傷で、授業後も図書室にこもるのはこれが大きな原因だって言ってもよかった。
晴野くんは、ちらっと僕を見た気がしたけど、すぐに視線を落としてしまう。
「そっか。俺は自分でここに来た」
「…え?」
「だから、陰気くさい顔するなよ。もったいないぜ?もっと楽しめよ。せっかくの高校生なんだしさ」