1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

 軽い調子でそんなことをいう晴野くんに、思わず怒りがわく。

 だけど、その怒りをさっと沈めて笑みを浮かべる。

「そうだね」

「…なぁ、颯人。嫌なら、断ってもよかったんだぜ?今だって、無理して笑っただろ」

 図星を突かれて思わず口を閉ざす。

 いきなり何を言い出すかと思えば、そんなケンカになるようなこと言えるわけないのに。

 正直、晴野くんと殴り合いなんかして勝てる自信はないし、そんなことしてそれこそ停学になるなんてまっぴらだった。

「晴野くんはさ、将来何になりたいとかあるの?」

「あるぜ。幸せな家庭を作る」

「は?」

「子どもは3人は欲しい。できれば1番上は女の子で、すっげぇ可愛がる。うざいって言われるくらいに」

「晴野くん?僕はそういう意味で言ったんじゃ…」

「俺さ、幸せな家庭作りたいんだ。そのためなら、どんな仕事でもいい。家族を養って行けるなら」

「…そっか」

 結局はそこにたどり着きそうだったから聞くのはやめた。

 幸せな家族か…。女の子みたいなこと言うな。なんて思って視線を戻す。
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