1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「…家まで送っていけねぇよ」

「途中までで十分です」

 あきくんは諦めたのか手を差し出してきてくれて、その手に自分の手を重ねる。

 いつもならバカみたいなことだって口にするのに、今は黙ったまま。学校を出ても、もうすぐ家の近くの公園につくのに、黙ったままです。

 話さなきゃいけないことがあるのに…。

 結局、黙ったまま公園の前までついてしまう。

「…蓬、ごめん。ここで」

「…あきくん、何か、隠していませんか?」

 離されそうになった手をぎゅっと掴んで離さない。あきくんから視線は重ならない。

「あきくん」

「…蓬、また今度話す。だから、離してくれ」

 視線は重ならないまま。そっと力を抜けば、だらりと腕は下がる。あきくんはそのまま背を向けて歩いていってしまう。

「…お父さんを見つけました」

 ぼそっと漏らした言葉。決して叫んだわけではないのに、あきくんの足が止まったのが分かる。

 ポケットに入れたままの紙切れを出して、それを差し出す。
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