１人ぼっちと１匹オオカミ(番外)

「…時間がかかってごめんなさい。ここに、あきくんのお父さんがいます」

「…蓬、本当に見つけたのはいつだ」

　少しとがったような声。

　思わず肩が揺れる。あきくんの視線が私を射抜く。

「…去年の、１１月です」

「今までなんで黙ってた」

「説得していたんです。あきくんと話をしてくれるように、会ってくれるように」

「…蓬、俺はお前になんてお願いした？」

　去年、お父さんの疑いを晴らして、情報屋をやめた日。

　その日、この公園で、あきくんが初めて口にした情報屋への依頼。それを果たすと約束した。

　その依頼は、『父親の居場所を、探してほしい』それだけのはずだ。それなのに、私は、それ以上の段階まで持ち込んだ。絶対に話を聞いてくれるという約束を取り付けて…。

「俺は、お前にここまで依頼してねぇよな」

「…はい」

「なんで、分かった時点で教えてくれなかったんだよ。なんで、黙ってたんだよ！」

　あきくんの怒鳴り声に何も言い返せない。

　ただの私のわがままだ。あきくんの話を、秋君のお父さんが確実に聞いてほしかったから。だから、あきくんに伝える前に確かめに行ってしまった。

　そして、拒否を続けるあきくんのお父さんを説得してしまったこと。

　これは完全に、私のわがまま。

　あきくんが、お父さんと傷つくことなく話せるようにと、手を回したおせっかい。