1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「よもも?」

「ッ…え、若さん?」

 うつむいたまま帰って来たせいで、玄関のところにいた若さんにぜんぜん気づきませんでした。若さんの隣にはお供さんもいます。

「よも、おかえり」

「ただいま。…若さんたちどうしたんですか?」

「いや、聞き込みみたいなもんだ。すぐに行く」

「もっと余裕があるときに来なさいよ。清牙だっていないのに」

「すみません…」

 組の時期組長さんさえも言い負かしてしまうお母さん。…流石ですとしかいえません。嵐鬼の後輩ということもあって、若さんはたじたじです。

「よもも、変なやつら見なかったか?」

「不審者ですか?いえ、見てませんよ」

「ならいいんだ。…一応伝えとくか」

 お供さんと目を合わせた若さんは真剣な表情で私を見つめる。

「よもも、いかにも俺らと同職な奴らがこの辺で目撃されてる。そいつらには気をつけろ」

「借金取りなんだが、その利子が明らかに不正だ。返せなくなった奴の、特に子どもだな。誘拐されて、鉄砲玉や、風呂屋に流されてる。一般にも被害が出てて、ほっとけねぇ事態になった」

 若さんの言葉をお供さんが付け足してくれました。

 裏組織に借金するなんて、よっぽど貧困に陥ってしまったのか、何なのか…。

 とにかく、危ないことに手を出した人がいるってことですよね。
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