1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)

「蓬はふさぎ込んでいます。
 もう16歳です。遠慮もあったんでしょう。
 自分が本当にここに居ていいのかと、1人に戻ろうとしているんです。
 どうしてくれるんですか。14年かけて、ようやく開いたあの子の心を、あなたはたった数時間で閉ざしたんです」

 大宮さんは、黙り込んだ。もう、いいだろう。
 もし、ここまで言って蓬を追い込むなら、もう2度と会せない。

 席にお金を置いて立ち上がる。

「蓬にはしばらく会わないでほしい。用があるなら手紙で。しばらく文通してみてはいかがですか。あなたはどうも焦るようなので」

「…これを、預かってほしい」

 振り返って見ると、手に乗るほどの小包を差し出されていた。

「…これは」

「母親から。蓬にどうしても渡してほしいと。…落ち着いた頃でいい。だから」

「…しっかり話せたときに、渡してやってください。それを、俺から渡せば蓬は俺の元から去ってしまう」

 俺から、お前は家族じゃないなんて、どうして突きつけられるんだ。

 大宮さんを残して、今度こそ店を出た。
< 49 / 523 >

この作品をシェア

pagetop