1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
「蓬はふさぎ込んでいます。
もう16歳です。遠慮もあったんでしょう。
自分が本当にここに居ていいのかと、1人に戻ろうとしているんです。
どうしてくれるんですか。14年かけて、ようやく開いたあの子の心を、あなたはたった数時間で閉ざしたんです」
大宮さんは、黙り込んだ。もう、いいだろう。
もし、ここまで言って蓬を追い込むなら、もう2度と会せない。
席にお金を置いて立ち上がる。
「蓬にはしばらく会わないでほしい。用があるなら手紙で。しばらく文通してみてはいかがですか。あなたはどうも焦るようなので」
「…これを、預かってほしい」
振り返って見ると、手に乗るほどの小包を差し出されていた。
「…これは」
「母親から。蓬にどうしても渡してほしいと。…落ち着いた頃でいい。だから」
「…しっかり話せたときに、渡してやってください。それを、俺から渡せば蓬は俺の元から去ってしまう」
俺から、お前は家族じゃないなんて、どうして突きつけられるんだ。
大宮さんを残して、今度こそ店を出た。