1人ぼっちと1匹オオカミ(番外)
自分の思い 秋空side
電車を乗り継いで1時間。ついた先は県の端にある産業が盛んな市。
ここに、親父がいる。ずっと、行方知れずだった親父が、ここに。
はやる気持ちを抑えて、バスの時間までを潰すために適当な定食屋に入る。
向こうでなんか食ってくればよかったな…。
昼休み時のサラリーマンに混じって、昼を食べる。
「高校生が、1人でどうした?」
声をかけてきたのは40代後半くらいのサラリーマンだ。親父も多分、これ位の歳だと思う。
「父親に会いに…」
「単身赴任かなんかか?」
「いえ、ちょっと事情があって、離れて暮らしてます」
「え?じゃあ、お前母子家庭か」
「いや、1人です」
「は?母親は」
「…5歳の時に」
なんだこの人、いきなり踏み込んで来るなよ…。
サラリーマンは、唖然して固まっていたが、ふと我に返るといきなり立ち上がって厨房に視線を向ける。